ご挨拶
久留米大学病院 整形外科
白濵 正博
第1回の本学会は阪神・淡路大震災の年でした。あれから16年、地球温暖化に伴う異常気象のため大きな土砂災害や台風、地震により多くの外傷を伴う災害被災者が出ています。外傷患者の迅速かつ適切な治療のため、ドクターヘリの有効性や外傷センターの必要性と共に、本学会の教育的目的も重要な役割を担っていると思われます。
救急患者の多くを占める四肢外傷症例に対する治療法では、開放骨折に対する初期治療や、多発外傷に対するDCO(Damage control orthopaedics)、骨盤骨折に対する治療、軟部組織損傷に対する治療など、本学会で多く討論して広く浸透普及してきている感じはあります。救急現場で活躍する、整形外傷治療に携わる若い先生方に、新しい知識と経験から得られた教訓を知っていただき、更に経験豊富な先生方にも興味を持っていただけるよう、今回のシンポジウムでは「急性期の骨盤外傷」と「骨盤輪・寛骨臼骨折の合併症」を取り上げました。骨盤外傷に対する初期治療と予後向上のための知識、合併症の予防と対症法について再確認し、更に症例を適切に治療していただけたらと思います。また、主題では、近年高齢者の増加にともない治療に難渋されていると思われる「高齢者の多発骨折・多発外傷」と「フレールチェストを伴った肩甲帯・上肢外傷」を挙げました。高齢者は余病も持っており内科的治療も必然的で、更に脆弱な骨に対する整形外科的治療も考慮する必要もあり治療が難しいと思われます。また、フレールチェストを伴った症例では、胸部外科との境界領域の治療となり協力が必要になると思われます。各病院での工夫、経験などを遺憾なく発表していただけたらと期待しています。一方教育研修講演では、ドラマ「コード・ブルー」のモデルとなった日本医科大学千葉北総病院の原 義明先生に「ドクターヘリを用いた重症整形外傷の初期治療戦略」と題して、救急患者の搬送、ドクターヘリのシステム、将来像等について講演していただく予定です。
本学会は、毎年北と南のリゾート地で交互に行っており、今回は南ということで、前回まで行っていた沖縄本島から更に南下して、これ以上に綺麗な海はないという石垣島で開催することにしました。日常の雑踏、救急の現場を離れ、目の前に広がる紺碧の海でリフレッシュするのも必要かと思います。海水浴にはまだ少し早いかもしれませんが、運が良ければマンタの優雅な姿も見られるかもしれません。本学会はスーツ姿の堅苦しい学会と異なり、ラフなスタイルでの討論会ですので、気兼ねなく質問していただくことが出来ます。また、夕食後の「治療に難渋した症例検討会」では、グラス片手に夜が更けるまで真実の曝露や、本音で症例を検討することが出来るのも特徴の一つです。今回は自治医科大学の松村福広先生と大阪府三島救命救急センターの岡本雅雄先生に代表世話人としてご協力していただきました。我々代表世話人一同が有意義で勉強になる、しかも楽しいシンポジウムになるよう企画いたしましたので、是非先生方お誘い合わせの上参加して頂くことを心からお待ちしています。