はじめに、今回の東日本大震災で亡くなられた方々のご冥福をお祈りし、また被災された皆様へのお見舞いと一日も早い復興を心よりお祈り申し上げます。
さてこの度、第19回救急整形外傷シンポジウムを2013年3月15日(金)、16日(土)に福島のホテルリステル猪苗代にて開催させて頂きます。救急整形外傷の分野はここ数年非常に進歩しており、数年前の知識や技術では対応できない状態になっております。重度四肢外傷においても数年前まで切断しか方法がなかった時代から比べ、医療技術が格段に進歩し患肢温存が可能になっております。我々の施設では神経損傷の有無にかかわらず阻血した患肢の修復不能な血管損傷以外は患肢温存を原則として治療を行っていますが、膨大な医療費、多数回の手術、感染、癒合不全、慢性疼痛、失業等患肢温存に伴う問題点も多く存在します。早期の切断と義肢装着は致死率、手術回数、入院期間、医療費、リハビリテ-ション期間を減らし社会復帰を早めるという報告も多数あります。
そこで今回はシンポジウム1として「外傷後切断の適応」を取り上げました。日常診療の中で実際に先生方がどのような基準で切断に踏み切るのか、患肢温存はどこまで許容されるのかにつき、活発な討論をしていただきたいと思います。シンポジウム2として「脊椎脊髄損傷の急性期治療」を代表世話人の一人である井口先生にお願いして企画していただきました。脊椎脊髄損傷の治療に関してはまだまだcontroversialな点が多く、今後コンセンサスを本学会が中心になって作っていく必要がある分野です。今回お願いしたシンポジストの先生方はいずれもご高名な先生方であり、参加した先生方に十分満足して頂けるシンポジウムになると思っております。また、主題として「手部重度外傷」、「高齢者の大腿骨遠位部骨折」、「東日本大震災-そのとき整形外科医は何をなし得たか-」を取り上げました。特に東日本大震災は我々日本人が経験したことのない未曾有の災害であり、後世に伝える必要のある風化してはいけない災害です。そこで特別講演として仙塩総合病院院長 神尾一彦先生に実際に東日本大震災を経験した立場よりお話していただきます。貴重なご講演をいただけるものと私自身も非常に楽しみにしております。また、東京大学大学院医学系研究科保健学講座教授 橋本英樹先生にはここ最近の医療経済の問題点、高齢者に対する高額な医療や延命のあり方について、さらに秋田大学医学部附属病院リハビリテ-ション科准教授 松永俊樹先生には脊髄損傷後のリハビリテ-ションについてご講演をしていただきます。
本学会は1995年に第1回が北海道で開催されて以来、毎年北と南のリゾ-ト地で交互に開催されております。今回は北海道での開催の順番ですが、被災地への復興の意味も込めて福島での開催といたしました。代表世話人である埼玉医科大学総合医療センタ-の井口浩一先生、新潟市民病院の伊藤雅之先生と私で日本の救急整形外傷の牽引になるような内容に企画したいと思っております。特に本学会の特徴である夜の症例検討会では予定通りに治療できなかった症例をぜひ報告していただき(このような症例にこそ参加者に勉強になる多くの教訓があります)、グラス片手に本音の討論をしていただきたいと思います。
3月15日、多くの先生方に福島でお会いできることを楽しみにしております。
第19回救急整形外傷シンポジウム会長
昭和大学藤が丘病院整形外科
小原 周