会長挨拶

このたび、伝統ある救急整形外傷シンポジウム(EOTS)の代表世話人をさせていただきます、東京西徳洲会病院 外傷センターの松村福広と申します。EOTSは毎回素晴らしい地域と環境で開催されますが、今回は6月の北海道・札幌で迎えることになりました。日本の6月は梅雨のため湿気が多く何かすっきりしない気持ちになりますが、北海道だけは6月でも梅雨がなく天候は安定していて、晴天の日が多く青空が広がります。最も北海道が美しく輝く季節が6月といっても過言ではないそうです。常日頃多忙な診療のためにゆっくりとした時間を過ごすことができない先生方はもちろんのこと、周囲で支えてくれている家族、恋人、同僚とともに、北海道の自然を感じ、美食に舌鼓を打ちそして美酒に酔いしれ心身ともにリフレッシュしていただきたいと思います。

もちろん最大の目的は日常の臨床現場で対峙している救急整形外傷治療の理論と実際について、日本でアグレッシブに活動している先生方による発表と白熱した議論にあります。つまり本会は、他の多くの学会とは一味違ったいわゆる“本音トーク”で議論ができ、問題を解決し、そして実際の臨床にすぐ生かすことのできる非常に実戦的な研究会なのです。

近年、学会や研究会では外傷治療について素晴らしい治療成績や手術手技が報告されています。各地で外傷センターが設立されるとともに、外傷治療に関連した症例検討会も頻繁に開催されており、10年前の外傷治療を取り巻く環境と比較しましても現状は劇的に変貌をとげています。確かに新しいインプラントが開発され、治療戦略も確立されるとともに外傷に対する治療法は進歩しているのかもしれません。しかし実際の外傷の治療成績は本当に向上しているのでしょうか。平均点で示した全体のデータとしては良好な治療成績が得られているかもしれませんが、それでも外傷治療に感染、偽関節、関節拘縮、神経麻痺などの合併症はつきもので、本当に良好な機能成績が獲得できていない症例も多くみられます。多発外傷や重度四肢外傷であればなおさらです。またたとえ合併症を発症しなくとも、外傷患者を外傷前と全く同じ機能状態に戻すことは大変難しく、日常生活への復帰と復職でさえもそれをスムースに達成することは容易ではありません。

そこで第22回EOTSのテーマは「合併症:その回避と対処」としました。まず全身状態から見た合併症として「ポリトラウマの合併症とその回避」をシンポジウムに選びました。ポリトラウマで特に回避したい合併症を今一度確認し、それらを回避するための注意点やテクニックをエキスパートの先生方に語っていただきたいと思います。次に治療に難渋する合併症としてパネルディスカッションに「主要血管損傷」を取り上げました。毎年EOTSで類似の症例報告がありますが、controversialな点も多く、経験の少ない先生方には必見だと思います。そして特別講演には上本宗唯先生(かみもとスポーツクリニック )に「外傷から社会復帰までのロードマップづくり~スポーツドクターからの提言~」として、究極の機能成績を目指すスポーツ整形外科医の立場から、機能回復のためのコツについてお話ししていただきます。スポーツ整形外科医は、医学生や若手整形外科医には世界中どこでも大人気であり、一見華やかに見えます。しかしながら真のスポーツ整形外科医には、診断や治療からリハビリテーション、そして現場復帰までを選手に寄り添いながら細部にわたり根気よくアドバイスするなど非常に地味で献身的かつ継続的活動が求められます。これは患者の良好な機能回復を目標とする我々にも同様に不可欠な姿勢です。上本先生は大学時代のラグビー部の先輩で、現役時代は医学部レベルを超えた規格外の選手でした。スポーツ選手を少しでもよくしたいという気持ちは半端ではありません。先生の熱い講演は、外傷患者を受傷前の状態に戻したいと模索している我々にとりましても核心を突いたメッセージになると堅く信じています。

今回は代表世話人である兵庫県災害医療センターの矢形幸久先生、順天堂大学医学部附属浦安病院の工藤俊哉先生と私の3人で熟考のうえテーマを掲げました。EOTSの初心に戻り、救急医と外傷整形外科医の双方が共有しておくべき重要なテーマです。外傷治療の究極の目標であります“外傷患者を受傷前と同じ状態へ回復させる”ために、熱く熱く議論していただきたいと思います。6月17,18日、多くの先生方に北の大地北海道でお会いできることを心から楽しみにしております。

東京西徳洲会病院 外傷センター
松村 福広

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